2-2 使用実態調査 「現代日本語書き言葉均衡コーパス(少納言)」を使って
次に、「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 (国立国語研究所・文部科学省 開発) を使って、1970~2000年代における「〈的/正鵠〉を〈射/得〉」の使用状況を調べてみます。検索は「少納言」 (http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/) のサイトを利用しました。このコーパス (言葉のデータベース) では、書籍・雑誌・新聞・ブログなど、様々な媒体がサンプルになっています。各媒体によってデータの発行年に偏りがありますが、書籍は1971~2005年、ブログは2008年のデータが使われているので、全体で見ると、ここ約40年間で使われた言葉が対象となっています (詳細はリンク先の「本サイトの検索対象となっているサンプル」をご覧ください) 。
集計結果と分析
集計結果は次の通りでした (集計方法は最後に詳述しました) 。
用例数 | 構成比 | |
的を射 | 81 | 55.5% |
的を得 | 29 | 19.9% |
正鵠を射 | 27 | 18.5% |
正鵠を得 | 9 | 6.2% |
(合計) | 146 | 100.0% |
前回の「神戸大学附属図書館 新聞記事文庫」の集計結果と比べると、傾向に大きな違いが見られます。相違点をまとめてみました。
神戸大学附属図書館 新聞記事文庫 (戦前) |
現代日本語書き言葉 均衡コーパス (戦後) |
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最も使用頻度が 高い語形 |
「正鵠を得」 (構成比 約98.9%) |
「的を射」 (構成比 約55.5%) |
「的を得」に ついて |
使用例なし | 使用例あり (構成比 約19.9%) |
「正鵠を射」と 「正鵠を得」の 比率 |
ほとんど 「正鵠を得」 のみ |
3:1の割合で 「正鵠を射」の 方が多い |
そのほかに気づいた点を列記しておきます。
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サンプルデータを「Yahoo!ブログ」と「Yahoo!知恵袋」に限定して用例数を数えてみると、「的を得」は16例、「的を射」は8例となり、「正鵠を得」と「正鵠を射」の使用例はありませんでした。「的を得」は、校正・校閲が入らない文章のなかで多く使われていることが分かります。
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用例のなかで、「〈的を得る〉は誤用」ということについて論じられているものが3例ありました (「的を射」で1例、「的を得」で2例) 。
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「正鵠を得」の用例のなかで、著者名が渋沢栄一 (生1840-没1931) になっているものが1例ありました。
※「現代日本語書き言葉均衡コーパス」のデータ集計について
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調査結果は2013年7月5日現在のものです。
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「用例数」は、検索結果のなかから以下の3つのデータを除外したものです。
- 調査対象とは無関係のもの (「目的を得た」など)
- 重複データ (「的を射」の検索結果で2例ありました)
- 「的確 な/である」「核心を 突く/突いた」の意味から外れるもの
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《正鵠・せいこく・せいこう・セイコク・セイコウ・的・まと・マト》 ×《得・え・射・い》を使った全ての組み合わせ (32パターン) を検索しました。そのなかで有効な用例を採集できたのが、「的を射」「的をい」「的を得」「マトを得」「的をえ」「正鵠を射」「正鵠を得」の7パターンでした。同じ語形で表記だけが異なるものは、1つにまとめて集計しました。