3-5 辞書の解説 (その他の表現)
その他、辞書のなかで「的を得る」に関連する情報が載っているものを挙げていきます。
「正鵠を得る」
戦前には、すでに「正鵠を得る」を解説した辞書がありました。
1922年
程よき處に適中することを「正鵠を得」といふ。
(『袖珍コンサイス万用字引』文化出版社 p.287)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/917177/150
※国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/) より
1930年
程よき處に適中するを「正鵠を得」といふ。
(『現代語新辞典』新井正三郎自治館 p.159)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1110415/335
※国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/) より
「的を失う」
百年以上昔の辞書に「正鵠を失はず」の項があり、解説文で「的を失はざる」という表現が使われていました。当時は、「正鵠」と「的」をほぼ同義とする向きがあったのでしょう。
1909年
〔
(『故事熟語辞典』増補改版 宝文館 p.693)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862864/426
※国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/) より
「射る」
原義の「的を射る」は、「的に向けて (矢を) 放つ」の意味しかなかったのでしょうか。あるいは「的に当てる」の意味もあったのでしょうか。古い辞書を見ると、「射る」の項に「当てる」の意味が載っているので、昔から両方の意味で使われてきたことが分かります。
1889-1891年
いる・イル・イレ・イ・イ・イヨ (他動) (規.四) 射〔 (一) 略〕(ニ)矢ヲ射テ當ツ。「的ヲ射貫ク」
(大槻文彦 [編]『言海』p.91)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992954/115
※国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/) より
1898年
いる 動 上一 他 射。矢を放つ。矢をあつ。
(落合直文 [編] 『ことばの泉』大倉書店 p.163 )
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862875/90
※国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/) より
1917年
【いる】(射) (動) 矢または丸をはなつ。矢または丸を物にあてる。
(『俗語大辞典』集文館 p.85)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958678/49
※国立国会図書館デジタルコレクション (http://dl.ndl.go.jp/) より
「的をつく」
「的を得る」ほどではありませんが、「日本語の誤用」を指摘する本のなかで、「的をつく」が取り上げられることがあります (第4章で詳述します) 。この表現が、『日本国語大辞典』の「せいこく を 得 (え) る」の項で使われていました。