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メモ 2013.10.10~

「誤った日本語」について調べてみます。

3-2 辞書の解説 「的を得る」の場合

的を得る

「的を射る」に続いて、「的を得る」の場合を見てみます。石山茂利夫『今様こくご辞書』 (読売新聞社 1998年 p.94) によると、「的を得る」を初めて載せた国語辞典は『三省堂国語辞典』第3版 (1982年) とあります。同辞典を確認すると、「的を射(イ)る」の項の最後に次のように記載されていました。

※用例・文献の引用方法について

1982年

的を射(イ)〔語釈略〕〔あやまって〕的を得る。

(『三省堂国語辞典』第3版 三省堂 p.1065)

 

この後、他の辞書ではどのように解説されていったのでしょうか。私が確認した辞書 (国語辞典以外も含む) を年代順に並べてみます。

1994年

(まと)() 〔語釈略〕◎ほぼ同義の慣用句に「的を得る」がある。〔例文略〕

(『慣用表現辞典』東京堂出版 p.230)

※「的を得る」が誤用であるとの注記はありませんでした。

 

1997年

的を射 〔語釈・例文略〕▶「的を得る」は誤り。

(『現代国語例解辞典』第2版 2色刷 小学館 p.1191)

 

2001年

的を射 〔語釈略〕書き方注意「的を得る」はあやまり。
〔傍線は原文による〕

(『学研現代標準国語辞典』初版 学習研究社 p.967)

 

2001年

まと を 得 (え・う)  的確に要点をとらえる。要点をしっかりとおさえる。当を得る。的を射る。〔用例略〕

(『日本国語大辞典』第2版 第12巻 小学館 p.471)

※「的を得る」が誤用であるとの注記はありませんでした。

 

2002年

〔的〕を射 〔語釈略〕参考「的を得る」とも言うが、本来は誤用。

(『新選国語辞典』第8版 2色刷 小学館 p.1134)

※「本来は誤用」ということは、現代では (俗用ながらも) 使用を認める立場なのでしょうか。

 

2005年

(まと)() 意 味 大事なところ・正しいところをきっちり言い当てる。「的を得る」というのは間違い。

(米川明彦・大谷伊都子 [編] 『日本語慣用句辞典』東京堂出版 p.417)

 

2006年

的を◦射る〔語釈・例文略〕〔「的を得る」は「当を得る」と混同した誤り〕

(『大辞林』第3版 三省堂 p.2405)

 

2010年

的を・射〔語釈・例文略〕注意「当とうを得る(=理にかなう)」や「要領を得る」との混同から「的を得る」とするのは誤り。

(『明鏡国語辞典』第2版 大修館書店 p.1649)

 

2011年

(まと)()〔語釈・例文略〕使い方(まと)()る」といわないよう注意(ちゅうい)

(『チャレンジ小学国語辞典』第5版 ベネッセコーポレーション p.1167)

 

2012年

的を射()〔語釈・例文略〕注意「当を得る」とまぎれて、誤(あやま)って「的を得る」と言われることもある。

(『例解新国語辞典』第8版 三省堂 p.1132)

 

「的を得る」は、1980年代に入って『三省堂国語辞典』にようやく掲載されましたが、他の辞書が追随するまでその後10年以上かかっています。「的を射る」とは異なり、近年になるまで重要語とは見なされなかったのでしょう。また、「的を得る」を見出し語にしている辞書は『日本国語大辞典』のみで、他は「的を射る」の項で「的を得る」が解説されていました。さらに、 ほとんどの辞書 (『日本国語大辞典』と『慣用表現辞典』以外) が、「的を得る」を誤用と解説していました。

 

上の記事を書き終えた後に『三省堂国語辞典』第7版が刊行されました。今回の改訂で、同辞典は「的を得る」の解説を大きく変更しました。これについては次回取り上げます。

 


2015年2月17日追記:
ベネッセコーポレーションの『チャレンジ小学国語辞典』は第6版 (2015年) が新たに刊行されましたが、「(まと)()る」といわないよう注意(ちゅうい)」とする記述はそのままでした。

 


2015年2月27日追記:

小学館の『例解学習国語辞典』第9版で「的を得る」を誤りとする記述を見つけました。

2011年

まとをいる(4)(6)る】〔語釈・例文略〕 参考▶「(まと)()る」とするのはあやまり。

(『例解学習国語辞典』第9版ドラえもん小学館 p.1070) [2013年 第6刷]
※通常版は2010年の発行でした。

同辞典は2014年11月に第10版が刊行されましたが、「あやまり」の注記はそのままでした。

 


2015年12月12日追記:

1994年刊行の『学研 レインボー小学国語辞典』改訂新版で、「的を得る」を誤用とする記述を見つけました。

1994年

まとをいる【的を射る】〔語釈・用例略〕注意「的を()る」はあやまり。

(『学研 レインボー小学国語辞典』改訂新版 学習研究社 p.857) [2000年第11刷]

同辞典はその後『新レインボー小学国語辞典』と名が変えられ、2015年12月に改訂第5版が刊行されました。そこでは、「あやまり」が「本来の言い方ではない」と書き換えられました。

2015年

まとをいる【的を射る】〔語釈・用例略〕★金田一メモ(まと)()る」は、本来(ほんらい)()(かた)ではない。
〔「金田一メモ」とは、監修の金田一秀穂先生による注記のこと。★の部分には金田一先生の似顔絵が入っていました〕

(『新レインボー小学国語辞典』改訂第5版 学研プラス p.1199)

 


2015年12月12日追記:

2010年刊行の『小学新国語辞典』改訂版 (光村教育図書) の欄外に、言葉に関する穴埋めクイズが掲載されていました。このなかで、「的を射た/得た」のいずれかを選択させる問題がありました (「正解」は「①射た」) 。

2010年

◖  (はい)るのはどっち? ◗ 質問(しつもん)に,(まと)  (こた)えが(かえ)る。  ①()た ②()

(『小学新国語辞典』改訂版 光村教育図書 p.931) [2014年第8刷]

 


2015年12月16日追記:

2015年12月発売 (奥付の刊行年は2016年) の『例解新国語辞典』第9版で、「的を得る」に関する解説が書き換えられました。旧版では「「当を得る」とまぎれて、誤(あやま)って「的を得る」と言われることもある。」となっていたのが、今回の版では誤用注記が取り消されました。

2016年 (発売は2015年12月)

的を射正確に要点をとらえる。「的を得る」と言われることもある。

(『例解新国語辞典』第9版 三省堂 p.1148)

 


2016年2月3日追記:

小学館の『大辞泉』は、2012年刊行の第2版では 「的を得る」を誤りとしていました。

2012年

的を◦射 〔語釈・用例略〕補説「当を得る (道理にかなっている) 」との混同で、「的を得る」とするのは誤り。
〔この補説の後ろに、文化庁平成15年度「国語に関する世論調査」の結果が引用されていました〕

(『大辞泉』第2版  [下巻] 小学館 p.3437)

同辞典のネット版「デジタル大辞泉」には「誤り」の注記がなく、「国語に関する世論調査」の結果のみが記載されていました (2016年2月3日現在) 。

 


2016年11月15日追記:

小学館現代国語例解辞典』第5版が刊行されました。「的を得る」については旧版と内容が変わらず、「誤り」となっていました。

2016年

的を射 〔語釈・例文略〕▶「的を得る」は誤り。

(『現代国語例解辞典』第5版 小学館 p.1325)

 


2016年12月8日追記:

『学研現代標準国語辞典』改訂第3版が刊行されました。「的を得る」については、「あやまり」の注記が「本来の言い方ではない」と書き換えられました。

2016年

的を()〔語釈・例文略〕参考「的を得る」は、本来の言い方ではない。

(『学研現代標準国語辞典』改訂第3版 学研プラス p.1356)

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久御山