メモ 2013.10.10~

「誤った日本語」について調べてみます。

3-4 辞書で使われる「的を得る」

3-2 の記事で見た通り、「的を得る」が国語辞典で解説されるようになったのは1982年からのようです。しかし、他の分野の辞書を見てみると、もう少し以前から「的を得る」は登場しています。また、語釈 (語句の説明文) ・子見出し・例文のなかなどで、普通の慣用句として扱われているのが確認できます。

※用例・文献の引用方法について

1979年

〔的〕をえた〔的確な〕 acertado,da.

(『現代和西辞典』初版 大学書林 p.600)

※第11版 (2000年) も同じ記述でした。

 

1980年

的を得た (a) treffend.

(『現代和独辞典』初版 三修社 p.711)

※『新装版 現代和独辞典』第1刷 (2009年) も同じ記述でした。

 

1984

relevant,pertinent,apposite,germane 関連のある,⦅質問・意見などが⦆的を得た,ぴたりと合った⦅…に to⦆.

(『英語反対語・対比語辞典』初版 東京堂出版 p.88)

※再版 (1989年) も同じ記述でした。

 

1995年

その映画についての彼の評価は辛辣であったが,的確で的を得ていた.
〔「まと (的) 」の項の例文より。英文略〕

(『新和英中辞典』第4版 研究社 p.1743)

※第5版では上記の例文はなくなっていて、「的を射る」を使った他の例文が載っていました。

※ネット版の『新和英中辞典』 (https://ejje.weblio.jp/content/%E3%81%BE%E3%81%A8) には、「この作品に対する彼の批評は的を得たものとはとうてい言いがたい.」という例文がありました。

 

2000年

はぐ・る[逸る] (動下二) 〔中略〕❶思わくや意気込みが的を得ないで、収りのつかない状態になる。

(『時代別 国語大辞典』 [室町時代編4] 三省堂 p.632)

 

2000年

【徳義】トクギ〔①略〕②賞罰が的を得ているさま。

(『全訳 漢辞海』初版 三省堂 p.510)

※第2版 (2006年) も同じ内容でした。第3版 (2011年) は「的を射て」に訂正されていました。

 

2001年

カンボジア語の文は省略〕彼の答えは的を得ている。

(『カンボジア語辞典 (上) 』東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 p.463)

 

これらのなかには、校正ミスで載ってしまったものもあるのでしょう。とはいえ、辞書のように厳格に言葉を扱うべきところで「的を得る」が使われているという事実は、この慣用表現が有識者の間でも広まっていることを示していると言えるのではないでしょうか。

久御山