的を得る
ここ5年間 (2014年以降) に改訂した辞書で、「的を得る」について言及しているものを調べました。「的を得る」を容認することに対しては、否定的・消極的な見解が今なお多数派です。
この記事では、「的を得る」の使用実態について書かれた資料を見てみます。文化庁の「国語に関する世論調査」のほか、1973年に発表された論文を取り上げます。
「正鵠を得る」の正誤について書かれた文献を見てみます。
前回に続き、「的を得る」の正誤について書かれた文献を見ていきます。今回は、1990年代以降に発表されたのものを挙げていきます。
この章では、「的を得る」の正誤について述べられた文献や、この表現の使用実態を調査した資料などを見てみます。 まずは、「的を得る」について書かれた文献を年代順に見てみます。
その他、辞書のなかで「的を得る」に関連する情報が載っているものを挙げていきます。(「正鵠を得る」「的を失う」「射る」「的をつく」)
前の記事で見た通り、「的を得る」が国語辞典で解説されるようになったのは1982年からのようです。しかし、外国語辞典・漢和辞典にまで調査対象を広げてみると、もう少し以前から「的を得る」は登場しています。
2013年末に、『三省堂国語辞典』第7版が刊行されました。同辞典は第3版(1982年)以降、「〔あやまって〕的を得る。」と書き続けてきましたが 、今回の改訂では大きく記述を変えました。
「的を得る」は、1980年代に入って『三省堂国語辞典』にようやく掲載されましたが、他の辞書が追随するまで、その後10年以上かかっています。この慣用句を掲載している辞書のほとんどが「誤用」と解説していました。
石山茂利夫『今様こくご辞書』(読売新聞社)によると、戦前の主だった国語辞典に「的を射る」は載っていなかったそうです。しかし、国語辞典以外の辞書にまで調査範囲を広げると、百年以上前の記載例が確認できます。
「裁判所」(http://www.courts.go.jp/)のサイト内には「裁判例情報」のページがあり、過去の判例のなかで使われた言葉を検索することができます。これを利用して、「〈的/正鵠〉を〈射/得〉」の用例数を集計してみました。
「国会会議録検索システム」を使って、1947年から現代にかけての「〈的/正鵠〉を〈射/得〉」の使用状況を調べてみました。
「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(国立国語研究所・文部科学省 開発)を使って、1970~2000年代における「〈的/正鵠〉を〈射/得〉」の使用状況を調べてみました。
この章では、「的を射る」「的を得る」「正鵠を射る」「正鵠を得る」の4つの慣用表現が、かつてどれほどの頻度で使われてきたかを調べてみます。まずは「神戸大学附属図書館 新聞記事文庫」を使って、戦前期における4つの慣用表現の使用頻度を見てみます。
「的を得る」の用例を探していたときのことです。坂口安吾の小説「ジロリの女」のなかで、「的を得ていることがあるもので」と書かれている箇所があるのを発見しました。
その他、「的を得る」に関連した表現の用例を挙げておきます。(「的を逸す」「的をつく」「的を射(え)る」「準的を得る」「正的を 得る/失す/射る」「鵠的を得る」「正鵠を獲る」「正鵠的を得る」)
「肯綮を得る」は、かなり古くから使われています。これは、「肯綮」の原義が薄れて抽象的な意味合い(「物事の核心」の意)が強くなっていったからでしょう。同様の現象が「的を得る」にも起きているとは言えないでしょうか。
「当を得る」などというときの「当」は、通常「とう」と読みますが、最近では「まと」と読まれることもあるようです。ここでは、「当」に「まと」の振り仮名が付けられている用例を集めてみました。
「的を得る」は、「当を得る」と「的を射る」とが混交して生まれたものである、とよく説明されます。それでは、「当を射る」という語形も存在するのでしょうか。調べてみたところ、1958年の用例が見つかりました。
江戸時代から「正鵠」に「まと」の振り仮名があてられてきたという事実は、「〈正鵠を得る〉から〈的を得る〉が生まれた」という説を裏付ける証左の一つにはなり得るでしょう。
この記事では、「正鵠を得る」と「正鵠を射る」の初出について調べてみます。「正鵠を得る」は1884年、「正鵠を射る」は1887年の用例がありました。
小学館『日本国語大辞典』第2版に記載されている「的を射る(=要点をとらえる)」の初出例は1946年のものでしたが、1906年刊行の辞書に「的を射た」の項目があったのを発見しました。
「的を得る」の対義表現である、「的を 失す/失する/失う」の用例を採集してみました。少なくとも19世紀末から使われていることが分かりました。
「的を得る」の用例で、年代は古いものの、「物事の核心を突く」という意味からは少し外れていると思われるものを挙げていきます。
国語学者や文学博士など、有識者が使った「的を得る」の用例を挙げてみます(大久保正・村石昭三・大野晋・鈴木孝夫・杉本つとむ・谷沢永一 他)
江戸時代から1940年代までに使われた、「的を得る」の用例を挙げていきます。
前回の記事に続き、ここでは1950年代の「的を得る」の用例を挙げていきます。これよりさらに古いものは、次回に載せます。
小学館『日本国語大辞典』第2版には「まとを得(え・う)る」の子見出しがあり、初出として高橋和巳の用例が載っています。これよりも古い用例があるかを調べてみました。ここでは1960年代の用例を挙げてみます。
このブログでは「誤った日本語」とされる言葉について調べてみます。「正しいのか、誤っているのか」を無理にはっきりさせるのではなく、その言葉についての情報を集めることを主な目的としています。最初は「的を得る」を取り上げます。